鍵っ子もいろいろと思うことがあるんです
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最期まで笑顔を絶やさなかった、大好きな君へ






半分彼氏だった、君の頑張りに捧げるLoveSong

ずっと言葉足らずな男の子だった。
私は彼よりも3つお姉さんで、ちょっと背伸びしたお母さんみたいな私を笑いながらキスしてくれる。
手を絡める時の彼の顔が強張って真剣なのはいつだっておかしかったけど、からっぽの痛みに緊張する私への気遣いだって、ちゃんと気づいてた。

・・・どうして涙を零すの?痛いのは私の方だって。

「足元に気を付けて。」
「ちゃんと引っ張っていくよ。」
「・・・あーん。」

本当は彼が私に言うはずだった言葉を、私は彼に投げかける。
彼は何も答えないけど、情けなさをいっぱいに抱えて立ち竦んだ『足』を、そっと押す。

・・・本当は言って欲しかった。たくさんのありがとうと、ほんの少しのごめんなさい。
普通じゃない君に感謝して欲しい訳でも、恨んでる訳でもない。
どうしようもない今を、慰めて欲しいだけ。
本当に、それだけなの。



ある日の大きなトラックが、彼の体を真っ二つに引き裂いた。
両足は彼の下半身から外れて遠くに飛んだ。
真っ赤な君を躊躇うことなく抱きしめて、必死で呼びかけたのに、君は返事一つ返してくれなかった。

幾多の管に繋がれた彼が目を覚ましたのは、それから数日。
生きているだけでも奇跡。奇跡なんだよ?、でもそれを知った瞬間はこれほどまでにも残酷で、喜ぶべき私の顔は涙で歪んだ。
なのに君は、本当に、何もなかったかのように、笑ったの・・・・・・・・・覚えてる?

「へっちゃらだ」って。

どうして私だけが泣かなくちゃいけないの。
どうしてそんなにも悲しい笑顔で私を慰めるの。
痛みを分けて欲しかった・・・少しだけでいいから。
でもね、気づいてなかったわけじゃない。
時折見せるその滲んだ笑顔が、抱擁と慰めを誰よりも望んでたってこと。
誰よりも強くありたかったはずの彼の背中を、私はさすりながらも、「大きいな」って、「男の子だな」って。
彼の精一杯の強がりを小さな手のひらで感じてた。



彼は一人じゃ何も出来なかった。
排泄だって、私が手伝ってあげなくちゃ、誰もしてくれない。
彼は看護士さんに手伝って欲しいっていつも怒ってたけど、私は一歩も譲らなかった。
恥ずかしさを隠すことなく私の方を見て、泣いたこともあった。
でも一回だって、他の人に見せることなんてなかったよ。
彼氏の裸なんて、彼女以外誰も見ることは許されないんだから。
一度だってめんどくさいだとか、気持ち悪いなんて思ったことないよ。
だって、私と生涯、一緒なろうって、誓ってくれた人の世話だったんだから。



一度きりの大きな喧嘩で言っちゃった。
「半分彼氏」
私が言った瞬間、君は急に黙り込んで、涙を流した。
ぽろりぽろりと泣く君を抱きしめて、何度もごめんなさいって謝った。
でも、喧嘩だってしてみたかった。
戦う君の勇ましさに隠れたほんの小さな弱さを、知りたかった。



いつかの君は、一回だけ私に弱音を吐いてくれた。
失った筈の脚の痛みが時折訪れること。
それはまるで、鋭利な刃物でゆっくりと脚を切り刻まれるような痛みだって。
痛いって、何回聞いたか分からない。
医者達は皆、この痛みだけは鎮痛剤が効かないんだって、目を伏せた。

皆が目を逸らす中、私だけはずっと見てたよ。
君が頑張って痛みに耐え抜くところ。絶対に目を離さなかったから。
つらかったよね?いたかったよね?
気を失ってしまった君の頑張りを讃えながら、私は静かに、声を殺して泣いた。

半分しかいない君を見て、私もつらかった。
でもね、私が本当につらかったのは、もし『君達』がまた一緒になって、私の横を歩いてくれるんじゃないかって、少しでも考えちゃったとき。



私が二十歳になったとき、彼は病室のベッドで、静かに息を引き取った。
まだ、お酒が一緒に飲める年にもなってなかった彼は、冷たい頬を少しだけ引きつらせて、笑って死んだ。
最後まで私に弱さを見せまい、と。
長かった闘病生活は、こんなにも呆気なく終わってしまった。
彼と二人きりになった病室で、ぽとりと、彼の頬に涙を落とした。
それでも私は、必死でその涙を拭って、彼との最後の時間に・・・ぐしゃぐしゃの笑顔を見せた。
彼が死んでしまったことに悲しむよりも先に、「頑張ったね」って、誉めてあげた。
私にくれたこれまでの笑顔と、私の背中を押すたくさんの勇気を。



葬儀に出た人々は皆、彼の死を悼む。
君がいなくなってしまったことを悲しむ人が、こんなにもたくさんいること。
煙となってお空の上にいる君は知っていたのだろうか。

皆が涙を流す中、私だけはずっと、君の久しぶりの満面の笑顔を写真越しに眺めていた。
彼らの涙には同情や寂しさに溢れていた。本当に・・・いっぱいだった。
でも、どうか忘れないで。
彼がここに至るまでに、計り知れないほどの頑張りがあったこと。
私だけが、全部知ってるから。

忘れないから。

最後の瞬間まで、私は涙をみせなかった。
君のおかげで強くなれた私を、誰よりも君に示したかったから。
立ち向かう勇気と、『これから』を生きる希望を。



半分だって、よかった。
もう二度と、一緒に横を歩くことが出来なくても、よかった。
子供がつくれなくたって、よかった。
私だけを抱きしめてくれる、君の優しい両腕だけがあれば。
私たちの愛を確かめる、ほんの小鳥がついばむようなキスができれば。
君の・・・何にも勝らない笑顔があれば。

これを書き切る頃に、私はもう君の歳を遥かに通り越して、もうすぐ君の傍へ。
あんなにも小さかった君が、成長した姿を・・・どうか私に見せてください。
ぎゅって抱きしめて、慰めてください。
君と一緒に過ごすはずだった長い長い時間を、たった一人で、それでも懸命に生きた私を。
身長は私と大して変わらなかったのに、誰よりも大きな翼を、私にくれた君。

悲しい恋なんて言わないで。
私にとって・・・私達にとっては、生涯最後の、笑顔に溢れたLoveSongなんだから。

最期まで笑顔を絶やさなかった、大好きな君へ。
あなたの大好きな彼女より。
これまでの多大な感謝と、精一杯の『ありがとう』を込めて。
半分彼氏だった君の頑張りに捧げるLoveSong


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【2011/12/25 19:27】 | 小説
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