鍵っ子もいろいろと思うことがあるんです
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「終わりの惑星のLoveSong」考察
No.12「Heroの条件」



在り得ない「何千万キロの道」を歩くということ

それではNo.11「Last Smile」に引き続きNo.12「Heroの条件」について考えていきたいと思います。是非「Heroの条件」を聴きながら読んでみてください。麻枝さんと中川君の合作ということもありこのアルバムも遂に佳境を迎え切った感じではないでしょうか。厳かな雰囲気の中で語られる賢人と旅する少年、そして物語を説く「ぼく」を取り巻く終わりの惑星のLoveSongを紐解いてみましょう。最初に着目しておきたいのは彼が世界を救う英雄になるための旅路は「何千万キロの道」を歩くことだった、ということです。



何千万キロの道をきみは歩いた



地球一周は約4万6000キロと言われています。結論から言えば彼が何千万キロの道を実際に歩くことはその生涯すべてをかけても不可能です。地球を1000回、もしかしたらそれ以上に歩くことになるのかもしれません。そして例え同じ地球を1000回2000回と歩いたとしても、「ぼく」が説く賢人の物語そのすべてを知ることはできません。何故なら説かれた賢人たちの物語は別の惑星で語られた物語なのかもしれないのですから。その根拠は少年と「ぼく」の旅路が何千万キロもの道程であったことから窺い知ることができます。同じ惑星を何千と周回したとも考えられますがHeroの条件における「きみ」と「ぼく」の旅路と賢人達の物語が同一時系列上に存在していること、しかしながら個々の世界観に気持ち悪いほどズレが生じていることから惑星が異なり、同時にここで形成された文化に違いが生じていたと考えるのが妥当ではないでしょうか。同一銀河上で「凍る夢」における仮想現実を生むほどの科学技術が存在し、さらに「Last Smile」における熱心な研究者が地球を終わりに至らしめる「悪い菌」を研究できるほどの施設が存在したことからも、宇宙を渡る箱舟が存在していたとして何ら不思議ではありません。



次目覚めると、ヘッドセットマイクを付けた女性があたしを見下ろしこう告げた
バグが発生しました、と


昔は熱意のある研究者で
子供たちのため世界を治そうとした


ある日聞いた話 宇宙へ旅立つための大きな船を造っているらしい



とある惑星では、当然のように魔法使いが存在するのかもしれません。ある惑星では、かつてのローマ時代のように剣奴が見世物としてコロッセウムで戦い合う日々が存在するのかもしれません。ある惑星では、見せしめのための死刑執行が当然なのかもしれません。ある惑星では、海を渡り海賊たちが縄張り争いを日々繰り広げているのかもしれません。そんな世界があっても私たちはそれを否定することはできません。今の桜散る現代を生きる我々は、美しい今の「地球」しか知らず、その中でしか生きていくことはできないのですから。この「地球」が終わりを迎えるその前に、もしかしたら脱出し他の惑星で行く抜く手立てが見つかるのかもしれません。しかしその移り住んだ惑星とて無限に生き抜ける安息の地ではありません。本当の最期には、すべての惑星は一つ残らず滅び「終わり」を迎えてしまいます。



ある日きみは会うなり こう言うんだ
手に持ってるだけで 魔法を使うことができる 石があるらしい
「是非探すのを手伝ってくれ」と


「この僕と決闘しろ 道は自分で切り開け」


彼女は見せしめに吊されていた
僕はそれを撃つだけのお仕事


海賊なんて名乗って格好だけつけてる優しい人
あたしもよく可愛がられた



しかし少年と「ぼく」は様々な集落、街、国、そしてそれらの惑星を渡り歩くことで世界を救う英雄になる「夢」を叶えようとしました。そして彼らと同じ人類が生活する地球に似たその惑星の数々もまた、同様に廃退の一途を辿っている姿を目にします。同じ姿をした一面灰色の「悪い菌」が蠢くその世界を。かつて青く美しくあったその惑星達は同様の変貌を遂げていました。



そして目覚めたらそこは一面灰色の世界


なにもかもが狂った世界で
きみだけが綺麗なものに見えた



成長する少年の心

世界を救う英雄になろうと決意した「きみ」は、まだ年端もゆかぬ少年でした。この少年というのを自分の中ではちょうど中学二年生くらいなのではないかなと思っています。麻枝さんはこのコンセプトアルバムを発売する前に何度も仰っていました。「この歌詞は中学二年生でも描ける状況説明に徹した歌詞なんだ」と。肉体的にも、そして精神的にも成長していない彼は無謀にも悪い菌に犯された終わりゆく惑星を救うことを考えました。しかしながら「ぼく」は当然疑問に思いました。そしてその疑問を率直に、英雄を夢見るその少年に尋ねます。「どうやって」と。



きみは世界を救う英雄になると決めた
まだ年端もゆかぬ少年なのにどうやって



きっとどうすればいいのかなんて幼い彼には全く見当もつかなかったことでしょう。しかしながら「ぼく」に聞かれてしまった以上「きみ」は必死にその手立てを考えます。年端もゆかず経験も少ない彼があるはずもない知恵を絞って。そしてたった一つ、その手立てを思いつきました。「きみ」は「ぼく」に意気揚々とその案を言い出します。「賢人と呼ばれる人を集めよう」と。賢人と呼ばれる彼らが集まればきっと世界を救うことができると少年はそう思ったのでしょう。自分は賢人を集めることで英雄になる夢が成就すると考えたわけです。



でもきみはない知恵を絞って考えた
賢人と呼ばれる人を集めよう



さて、ではその「賢人」とは誰のことなのか。彼はかつて旅を決意し、そしてこれまでの旅路に至るまでにその武勇伝を言い伝えられたことがありました。そしてその中でも最も自らが目指す「英雄」らしい能力をもってして偉業を成した4人の賢人の物語を理解し、そして信じました。



『「火吹き山の魔法使い」が極めた末に至った恋路の始まり』を。
『かけがえのない努力と懸命な理解の末に得た「Last Smile」』を。
『盲目の騎士と真実を見通す王の奇跡を謳った「Killer Song」』を。
『愛した騎士への悼みを背に自らの正義を貫く「無敵のSoldier」』を。



ある時は火山に暮らす魔法使いに
ある時はガラスの向こうの研究者に
ある時は難攻不落の城の王に
ある時は無敵とされる女戦士に



少年は「ぼく」と共に様々な賢人の物語を知り得たのだと思います。この後「ぼく」によって説かれるその4人の賢人の物語と共に。しかしながらそのすべてを少年は覚え信じ、そして理解してはいませんでした。何故なら彼はまだ年端もゆかぬ少年だったのですから。彼は兎にも角にも「英雄」になりたかったのです。彼が描く「英雄」像とは一体何なのか考えてみました。年端もゆかぬ少年が歴史に名を残す「英雄」を目指すのなら、目に見えてその偉業がはっきりと遺された賢人の物語を覚え、そしてその賢人として集めれば、従えた自分こそが真の「英雄」として名を残せるのではないか、と考えるのではないでしょうか。ですから前述した4人の賢人が少年から選ばれたわけです。存在するかもわからない与太話のArkをかつて求め、そしてただ死に逝く少年と少女の物語を、見せしめとして死を迎えようとする少女を自らの命を賭してまで助けようとした死刑執行人の恋路を、「終わりの世界から」始まったタイムリープという能力も持ちながら、その目的は少年の笑顔を取り戻すだけの旅の記録を、造花に塗れた「Flower Garden」を作り続け愛する娼婦の目覚めを祈り続けるだけで終わる少年の生涯を…どう活かせましょうか、活かそうと考えられるでしょうか。恋を知らぬ無謀な「英雄」には彼らが賢人として語られる意味を理解できずにいました。そんな彼らよりも、かつて竜が住んだとされる火吹き山の魔法使いや子供達のため世界を治そうとした研究者、真実を視る難攻不落の王、そして「無敵」と称号を恣にする女戦士のほうがよっぽど「英雄」に相応しいではないか、と考えるのではないでしょうか。まさに「格好良い」を求める中二病の末裔です。賢人たちの物語の本質を知るわけでは決してなく、魔法の石や研究者としての立場、真実を視る王と「無敵のSoldier」の称号…彼らが持つ「英雄」らしい能力と遺された偉業と結果だけを見て、少年は4人を真の「賢人」と思い込みました。ですから幼い少年の口から語られたのはこの4人の「賢人」達の物語だけだったのではないでしょうか。



何千万キロの道をきみは歩いた
でもきみはただ若い旅人でしかなかった



何千万キロもの道を歩いた「きみ」にはもう幼い少年の面影はありませんでした。年端もゆかなかった「英雄」になる壮大な夢を描き決意した大層な少年はただの若い旅人へと成長します。簡単に言えば「脱中二病」です。そして「英雄」でもなんでもない彼の元には…誰も集まることはありませんでした。「賢人」の誰一人として。賢人達とてそれぞれを懸命に生きているのですから。それぞれが愛した人とその生涯を謳歌するために。



結局誰も集まってはくれなかった



火山に暮らす魔法使いは愛する少年をマグマから救い出す手立てを魔法を極め探し出さなくてはなりませんでしたそれは惑星が終わる前に。ガラスの向こうの研究者は自らにできることはもう何もないと愛する少年と他愛ない話で精一杯の笑顔を遺すことを強く望みました。それは彼女の寿命を終える最期まで。難攻不落の王と仕える騎士は互いを守り合いそして励まし合い生き抜くことを誓いました。「無敵のSoldier」は師であり父であった彼の正義を全うし生き抜くことを心に決めました。それはどちらも惑星が終わるその時まで。



いつか必ずきみを救い出す
もっと魔法を極めて


触れ合うことなくても
確かに触れ合ってたよ
笑って過ごした
きみのさいごまで


きみはあたしをひとりの戦士に変えてくれた
きみを守る それが唯一のあたしの生きる意味


「この僕と決闘しろ 道は自分で切り開け」



賢人が誰一人集まらなかった、しかしそれでも英雄になる「夢」をあきらめず少年は再び何千万キロという道程を歩き続けました。その弱弱しい少年の背中を見つめていた「ぼく」はこの時思いました。彼がかつて「英雄」らしいと誇った4人の賢人の他にも賢人と呼ばれる人々は存在したことを、そしてその各々が賢人たる偉業を成し遂げていたことを少年に再び言い伝えるべきなのではないかと。旅人として成長した今の「きみ」だったらその素晴らしさを理解できるのではないかと。彼が目先の「格好良さ」に囚われ、貶した4人の賢人の物語を、未だ歩き続ける少年の後ろからまるで少年の無力な足取りを悟るかのように「ぼく」は語り始めました。



『死に逝く彼らをそらへと運ぶ「ふたりだけのArk」』の結末を。
『自らの破滅をも恐れず互いの命を賭した「Executionerの恋」』の結末を。
『「終わりの世界から」始まる失った笑顔を取り戻す旅』の結末を。
『夢を砕く惑星に対し夢を抱き続けた彼らの理想郷「Flower Garden」』の結末を。



ある人は希望の船を見つけてそらへと
ある人は死刑する人と助け合ったと
ある人は忘れた笑顔を取り戻したと
ある人はほんとの花を咲かせてみたと



与太話をその最期まで信じた「ぼく」は愛するたった二人だけが信じ抜いたArkを長い長い旅路の末見つけることができました。そしてその箱舟は死に逝った「きみ」と共にその身を運びそらへと。死刑執行人の一人はかつて優しい彼女を愛し、そして互いの命を賭してまでその逃走劇を謀りました。一度目は金を盗み彼女は一人孤独を求めました。しかしながら二度目のそれは優しい結末を迎えたようです。その助け合う恋路の先に。時間を遡るその禁忌を犯した少女は一面灰色の世界から再び恋した少年の笑顔を求め「終わりの世界から」のタイムリープを始めました。そしてその果てしない旅路の先に忘れてしまったはずの「笑いあう」贅沢な感情を彼女は再び取り戻すことができたようです。地下深くシェルターで生き抜く娼婦と少年はそれぞれが絶望に満ちたこの惑星で「夢」を抱き続けました。その「夢」こそが彼らの生きる糧だったのですから。悪い塵に犯され眠り続ける娼婦の前で祈る少年はある日、かつて少女が夢見た本物の「Flower Garden」を作り上げることができました。愛する二人は互いが求めたその理想郷で描いた「夢」を成就させることができたようです。

彼らがそれらの行為の果てに得たものを、「英雄」を夢見た少年は貶しました。幼い彼にはきっと理解できなかったのです。与太話の箱舟を探し求めるその意味を、自らの命を賭してまで一人の少女を助けるその意味を、禁忌を犯し果てしない旅路の先に得た少年の笑顔のその価値を、娼婦とその愛する少年が求めた花畑のその価値を。もしかしたら先に挙げた4人の賢人についてもその「英雄」らしい能力だけに目をつけ、彼らが成したその行為に意味を求めていなかったのかもしれません。火吹き山の魔法使いが魔法を極めるその理由。ガラス越しの研究者が最期を青年との他愛ないお喋りで終えたその理由。真実を視る青年が両足の腱を失った少女の手助けをした理由。無敵の騎士がその命を賭してまで悪党の少女に生きる道を示した理由。賢人達の物語を理解するには、少年は幼すぎました。しかし旅人として成長した彼は「ぼく」に説かれた一説を理解する境地へと至りました。そして彼は自分の無力さを悟りました。「英雄」の意味を知りました。彼のかつて弱々しかったその背中は既に紛れもなく「英雄」らしいそれでした。何千万キロもの旅路の果てに彼は彼なりの「Heroの条件」を導き出します。「ぼく」に説かれた8人の賢人の物語をその身に集わせて。



少し遅くなったきみは無力なことを悟った


賢人と呼ばれる人を集めよう



説かれた11のLoveSongと彼が知るに至った「Heroの条件」

では彼が長い旅路の先、知るに至ったその「Heroの条件」とは一体どんなものなのか。幼き彼が抱いた英雄像を形作った4人の賢人の物語、そして若き旅人として成長した「きみ」へ「ぼく」が説いた4人の賢人の物語を、これまで長くに渡って綴った各々の考察から読み取れる大きなテーマと合わせ「きみ」がかつてやったように解き導き出してみようと思います。

その前にまず…この「Heroの条件」に挙げられた賢人の物語は8つでした。しかしながらこれまでに語られた曲は全部で11曲なわけです。「凍る夢」「とある海賊王の気まぐれ」「雪の降らない星」については賢人の物語として「きみ」にも「ぼく」にも触れられていないんですね。この理由は個々の記事でも紹介しています。まず「凍る夢」について、彼ら人類は地下シェルターでの生活を超え仮想現実を作り出しそこに永遠の「夢」を見るという形で生き続けることを考えました。この「夢」は個々人の主観でしか見ることは決して出来ず他人が個々の「夢」に干渉することは出来ないわけです。ですから楽曲「凍る夢」に描かれた記憶少女の振りをした少女とそのドッペルゲンガーを巡る物語は当事者である彼女の主観でのみ知り得るものだったわけで、旅を続ける「きみ」と「ぼく」がその仮想現実を形作る巨大シェルターへと辿り着いても彼女を「賢人」として語り継ぐことは出来ないわけです。次に「とある海賊王の気まぐれ」ですが、もしも「きみ」と「ぼく」が旅路の途中で知り得た武勇伝であったなら「海賊王」という勲章に惹かれた「きみ」が語っても、たった二人だけで朝日へと向かう彼らの恋路を理解できない幼い少年に代わって、大人びた旅人としての「きみ」へ「ぼく」が語り継いでいてもおかしくありません。しかしそのどちらにも触れられていないなら「きみ」も「ぼく」も「とある海賊王」に出会ってはいないのかもしれません。歌詞の語呂や「ぼく」の語る賢者4人、「きみ」の語る賢者4人の並列関係を崩してしまうから描いていないだけ、とも考えられるんですがやはり記さなかったことに「きみ」と「ぼく」で語る賢人の物語に趣向が見られたのと同様に自分は意味を見出したいと思いました。「きみ」も「ぼく」も誰も海賊王に会っていないのだから語ることができません。しかしながら「終わりの惑星のLoveSong」における主題を伝えるうえで欠くことのできない、この楽曲にだけ描かれたテーマを持ち得ているからこそ収録しているわけです。言ってみれば作詞を手掛けた麻枝さんがこの「終わりの惑星」の上位世界に位置する人物だということです。誰も知り得ない「海賊王の気まぐれ」を手掛けた麻枝さんは当然知っているわけで、それを自らが持つテーマを伝える材料として我々に提供しているに過ぎません。最後に「雪の降らない星」についてですが、これは前述の通り惑星が終わる直前を描いた物語である故に誰も語ることができないんです。終わってしまった惑星に「きみ」も「ぼく」も足を運ぶことは決して出来ません。しかしながらアルバムに収録され我々が知り得ているのは「凍る夢」「とある海賊王の気まぐれ」の場合と同様です。今回この項で「終わりの惑星のLoveSong」における主題の一つ、言い換えるなら「英雄の条件」を考えていきますが、「きみ」からも「ぼく」からも語られなかったこれらの賢人の物語も考慮し考えていきたいと思います。



次目覚めると、ヘッドセットマイクを付けた女性があたしを見下ろしこう告げた
バグが発生しました、と。


なあこれからはひとりでやってこうと思うんだが
 この様だ…連れが必要だ
 ちょうどいい おまえがついてきてくれないか」


本当の最後なのにふたりはずっと笑ってた
部屋に入れた雪だるまは溶けきっていた



自分はこれまでずっと個々の楽曲を考えていく上で「夢」という言葉を重要視していました。「凍る夢」における少女が眠りの中で見た「夢」と将来を自らが持つ理想へと近づける道標となる「夢」の二つがありましたね。特に後者がこの「終わりの惑星のLoveSong」で大きな核となる主題の一つでした。


「終わりの世界から」における少女は過ちの彼方で再び恋した少年と笑いあう幸せを掴み取る「夢」を持ちました。


「ふたりだけのArk」における少年と少女は与太話に出てきた宇宙へと飛ぶ箱舟を見つける「夢」を持ちました。


「Killer Song」における難攻不落の王と騎士は互いを支え合う共に生き続ける「夢」を持ちました。


「Flower Garden」における娼婦は一面の花畑を、少年は愛する少女が描いたその花畑を共に歩む「夢」を持ちました。


「無敵のSoldier」における騎士は娘として、一人の弟子として愛したかつて悪党だった少女をこの惑星で守り抜く「夢」を、そしてその少女は彼の持つその「夢」を自ら生きる道を選び取ることで成就させました。


「凍る夢」における少女は小さな嘘からドッペルゲンガーを生み出し、その孤独の果てに真っ直ぐ少年に恋をする「夢」を持ちました。


「Executionerの恋」における少年と少女は自らの命を賭してまでも互いが生き続ける「夢」を持ちました。


「とある海賊王の気まぐれ」における少女と海賊王は自らの海賊としての生き方を同胞のそれと見つめ直しそして考え、信じた道を永遠のように突き進む「夢」を持ちました。


「雪の降らない星」における少年は終わりゆく惑星の中の「本当の最後」に愛する彼女と永遠に笑いあう「夢」を持ちました。


「火吹き山の魔法使い」における少年はかつて愛する少女を守り抜く力を、そしてその少女は魔法使いとなり彼が真に求めた彼女の生を成就させました。


「Last Smile」における青年と少女は互いがその最期まで無邪気に笑いあう「夢」を持ちました。


そして「Heroの条件」における少年は世界を救う英雄になる「夢」を持ちました。



これまで語られた11曲のLoveSongは確かに描かれた人物も、世界も、恋路の結末も違ったのかもしれません。しかしながらこれらのLoveSongにはこの抱く「夢」が愛する者と共にするLoveSongという形で共通点を見出すことができました。その共通点を元に自分はこの11曲を4つに分類します。


彼女達はその「夢」を叶えるために世界の禁忌を犯しました。恋した少年が「理想」とした年上の女性として彼の前に現れるためにタイムリープをし、その事を少年に語ってしまいました。仮想現実の中で彼女は「誰にでもある間違え」によって在りはしない4月31日を生き同時に一目惚れした彼に嘘をつき、バグとなり得るドッペルゲンガーを生み出しました。



追いつけない だから能力使う 過去へとリープ
そこでまたきみと出会い また恋をするんだ


4月14日
ホームルームの後、そういや、と彼に振り返られる
名前なんだっけ?何中?  
あたしは名前だけ答えて、
何中かは思い出せない、と答えた
もちろん彼は不思議そうな顔をした
それ以前の記憶がないから、と付け足した
明らかに彼の見る目が変わった
作戦、大成功



そして彼女たちはその罪の重さを身を持って知り、「在りのまま」を愛してくれる少年の元へ再び一面灰色の世界からタイムリープを行う果てしない旅路の機会を、凍った夢から目覚め再び温かな夢見る機会を得ることができました。そして彼女達の「やり直し」は忘れた笑顔を取り戻し、温かな夢を最期まで見続けることができた優しい結末を迎えることができました。



手に持ってたのは一枚の古びた写真
こんな色をしてた時代もあったんだ
そこで無邪気に笑ってる
きみに会いにここから旅(リープ)を始めた


4月11日
入学式
いきなり恋をした
決して格好いいひとではないけれど、なんかあたしのツボ



彼らは互いが「夢」を持ち得ました。しかしながら成就するのは愛するその片割れが望む「夢」その一方だけ。死に逝く片割れが祈ったその「夢」は愛するその人が生き抜くことだけでした。在りもしない箱舟を探すその旅路の本当の目的は頼りない「きみ」が「ぼく」に描くな惑星で生き抜く強さを教えることでした。なにかもが狂ったこの世界で生きる糧としたその「夢」はどちらも一面の花畑でした。かつて無敵の騎士と謳われた彼は愛した悪党の少女を娘として、弟子として逞しく育て上げる「夢」を持ちました。魔法の石を見つけ出すその旅路の目的は少年が愛する少女を守り抜く力を得ることでした。



本当はぼくのほうがたくさんのことを学んだ旅だったかもしれない
夢を抱く無垢な心 わずかな希望でも信じる思い 折れない強さ


いつかきみは話した 本物の花を見てみたいと珍しく
でもどこの地上にだってそんなものはない 夢のようなもの


その日からあたしは弟子入りをしてついて流離った
すべての技を盗んでまたひとりからやり直そうという計画だった


どうして魔法なんて 使いたいのかと訊くと
きみはそっぽを向いて 「この手である人を守りたい」



「きみ」が願った「ぼく」の生は「ぼく」の世界の果てまで箱舟を探し出す旅路の決意によって成就しました。娼婦が願った一面の花畑は愛する少年の「夢」として生きる糧となり続け、その最後に互いが願った「ほんとの花」で成就させました。無敵の騎士が願った悪党の少女の生は彼女の謳われた「無敵」の称号と生き抜く正義の選択によって成就しました。無力な少年が願った少女の生は彼女が火吹き山の魔法使いとして少年がかつて欲した力を得たことで成就しました。片割れが願ったその「夢」はすべて愛するもう一人の片割れのために願われたものでした。愛する人がこの残酷な惑星で生き抜くこと、唯それだけを願ったのです。



旅は続けるよ 世界の果てまで
きみの信じた船を見つけてみせるよ
ひとりでも


ある人はほんとの花を咲かせてみたと

ある時は無敵とされる女戦士に

いつか必ずきみを救い出す もっと魔法を極めて



互いを愛した少年と少女は恋に盲目でありました。それは互いの命を賭せるほどに。そして過酷な世界で互いを守り抜き、生き抜き、共に生涯を終えることを「夢」としました。出身を孤児院と同じくする真実を視る青年と同胞の少女は人を切り裂くその強さを得て難攻不落の王と両足の腱を失った騎士へ。死刑執行人と見せしめの少女は二度の逃亡の末に互いの手を取る優しさを得ることができました。



時は流れひとつの伝説がまことしやかに囁かれた
難攻不落の城があるが不可解
その城の主は眼が見えず騎士はまともに歩けさえしないと
そんな奇跡を起こす恋もある


ある人は死刑する人と助け合ったと



惑星の終わりは残酷にも刻一刻と近づいてきました。彼らは惑星の終わりを止める術を知りません。その経過を止めることを諦めました。しかしながら彼らは生きることまでもあきらめたわけではありません。とある海賊王とその食事係は、永遠を信じた少年と少女は、ガラス越しに触れ合う研究者と愛する少年はせめてと、愛する人との最期をその胸に「夢」として抱きました。



ふたりを乗せた小さめの船がゆっくり沖へと進んでく
朝の光へと


よりそいあい 傷つけあい
悲しみをもう知らずに生きていける気がした
永遠なんてありはしない それでもあると思えた


触れあうことなくても確かに触れあってたよ
笑って過ごしたきみのさいごまで



お分かりいただけたでしょうか。「終わりの世界から」「凍る夢」で一つ、「ふたりだけのArk」「Flower Garden」「無敵のSoldier」「火吹き山の魔法使い」で一つ、「Killer Song」「Executionerの恋」で一つ、「とある海賊王の気まぐれ」「雪の降らない星」「Last Smile」で一つです。彼らはかつて各々が思い描く「夢」を抱きました。しかしながらそのすべてが成就したわけではありません。この過酷な終わりゆく惑星の中でそれらすべてはささやかながらに本当に大きな夢でありました。ですが同時に、叶わないままで終わってしまったものは何一つありませんでした。一度は叶わなかった「夢」を再び求めそして果てしない旅路の末に成就させました。死に逝くことで叶わぬ「夢」を愛する者自身の生が「夢」となり継承しそして成就させました。愛し合う互いの生を「夢」とし互いを守り抜くことでその「夢」をも同時に守り抜き成就させました。最期を迎えるその瞬間までも共にいることを強く願い同時に「夢」として成就させました。 「夢」は眠り見るものではなく、自ら叶えるものであると、そしてそれは願う者が生を全うする限り無限の可能性を持ち得ることをこの「終わりの惑星のLoveSong」の大きな主題の一つとしているのではないかと自分は考察しました。そしてその「夢」…つまり「Heroの条件」における「きみ」が抱いた英雄という「夢」について自らの無力さを悟った少年はこの主題についての理解の深さを「ぼく」に説かれた賢人の物語によって痛感したのではないでしょうか。そして自分なりの「英雄像」を導き出すことができました。これもまた麻枝さんが伝えたいと願った主題の一つ、その願う「夢」の大きさについて。



少し遅くなったきみは無力なことを悟った
英雄なんてもういい
せめて笑顔を送ろうと決めた



「きみ」はかつて世界を救うことを夢見ました。しかしながら自分の無力さを知ったことで笑顔を送ることを夢見ました。彼を再び浅はかだと嘲りましょうか、かつて少年の彼が4人の賢人をそうした様に貶しましょうか、私達には決してそんなことは出来るはずもありません。「夢」の大きさに優劣など在りはしないのですから。語られた賢人が賢人たる理由はこの破滅を迎えようとしている惑星でなお生きることを願ったからではないでしょうか。死を約束された地でなお生きることを願う、この「夢」を抱いたことこそが偉業として残されるべき、そして今を生きる人類に示すべき唯一つの道であったのではないかと自分は考えました。彼らは決して自ら命を絶つその行為に至ることはありませんでした。生きることが過酷であることは確かでありましょう。終わりゆく惑星の彼らはその身に血飛沫を幾度となく浴びてきたのかもしれません。しかしながら生きていなくては希望を持つことは出来ません。「夢」見ることは出来ません。そして「夢」見たその先に…彼はいつだって必ず優しい結末を描いてきていたではありませんか。



ある人は希望の船を見つけてそらへと
ある人は死刑する人と助け合ったと
ある人は忘れた笑顔を取り戻したと
ある人はほんとの花を咲かせてみたと



「きみ」は自分ができる精一杯を施しました。ある日は道化師の格好をしてかつて失われた笑顔を取り戻そうと。持ち合わせていた「英雄」らしいとする安っぽいプライドは彼にはもうありませんでした。ある日は紙芝居を作って聞かせて今を生きる人々に賢人の生き抜く強さを示そうと。何千万キロにも及ぶ長い長い旅路で得た賢人の武勇伝はこんな大きな意味を果たすことに繋がりました。



ある日は道化師の格好をして踊った
ある日は紙芝居を作って聞かせた



しかしこんなことをしても笑ってくれるのは子供達だけでした。大人達は道化師の格好をした「きみ」を「能天気」と呼び嘲るのでしょうか、貶すのでしょうか。



でも笑ってくれるのは子供たちばかりで



それでいいではありませんか。「きみ」がかつて年端もゆかなかった少年だった時決意した「英雄」になろうとした長い長い旅路の果てに、自分が思い描くヒーローの条件を惑星が終わるその前に見つけることができたのですから。



でもきみは子供たちの立派なヒーロー


きみは世界を救う英雄になると決めた
まだ年端もゆかぬ少年なのにどうやって



そしてこれまでの曲が11の賢人達の物語を謳ったLoveSongであったのと同様に、彼も賢人として言い伝えられるべき英雄としてその名を遺しました。そのヒーローを目指した青年の物語は「きみ」を愛する「ぼく」に説かれた一節に。



ぼくは好きだよ



表題「Heroの条件」を最後に考える

以上で「Heroの条件」の考察は終了です。非常に長文ではありましたがここまでお付き合いくださいましてありがとうございます。思い返せばこの「終わりの惑星のLoveSong」考察も「Heroの条件」について記事を書きたくて始めたようなものでした。ここまで長い月日かかってしまいましたが、今書き終えることができて本当に良かったです。これまでのLoveSongとのクロスオーバーそして後日談とその結末を描いたうえで新たな主題を提示してきたこのアルバムの中心核です。何度も触れていますが自分が読み取った主題は「夢」でした。笑顔を送ることを決めたヒーローの物語はその笑顔を子供たちからしか取り戻すことは出来ませんでしたが、そもそも「夢」を見るのはどんな人なのでしょう。そうなんですね社会に出るまでに「夢」を見るのは紛れもなく子供達なんです。ですからこのアルバムを「キッズ向け」と麻枝さんは仰っていたわけですね。これは年齢的な意味を持つわけではなく、この世界で言えば「生き続けること」を諦めなかった人が「子供」として描かれているのではないかと思います。「生き続けたいと願うこと」=「夢」が成り立つのはこの舞台である惑星に生きる生命は終わり(死)と隣り合わせであるからと言えるのでしょう。そしてそれは我々が生きるこの現代では「夢」を軸とした例え話として挙げられるわけですね。しかしながらこの舞台となる惑星の終わりが本当に例えのまま終わるかといえば…そうではありませんね。いずれ地球に生きとし生ける生命は終わりを迎え「終わりの世界から」の死との葛藤を迎えることになるのかもしれません。今回は11人の賢人達すべての「夢」を語りそして得たその在り方を踏襲したこと、そしてそれはすべて「きみ」がヒーローになるための知恵となり得たことを信じ『11の賢人達のLoveSong考察の末に導き出した「Heroの条件」』としました。最終回は「この惑星のBirthday Song」です。次回はこの「Heroの条件」とは別の形、別の主題が語られてます。ご意見・ご感想はお気軽にどうぞ。あともう少しだけお付き合いください。
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【2013/03/05 06:05】 | 終わりの惑星のLoveSong
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ひら
こんなに考察できるなんて凄いです!
尊敬しちゃいます( ´∀`)
これからも楽しみにしてます!

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