鍵っ子もいろいろと思うことがあるんです
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「終わりの惑星のLoveSong」考察
No.7「Executionerの恋」



荒廃する世界と怨恨を全てを背負った「見せしめ」

大変遅れましたがNo.6「凍る夢」に引き続きNo.7「Executionerの恋」について考えていきたいと思います。まずは従来通りこの物語も「終わりの惑星」で紡がれる個々の一つであることを念頭に入れます。この世界観は見せしめに死刑執行人の登場、中世ヨーロッパを連想させますね。「Killer Song」「無敵のSoldier」における世界と非常に似通った印象です。麻枝さん自身も「Killer Song」と共通した荒廃の意味を持つ楽曲であると提言していました。さてこの物語に登場する「見せしめ」となる少女についての描写ですが、それは冒頭の3フレーズで挙げられています。


彼女は見せしめに吊されていた
僕はそれを撃つだけのお仕事
相当恨みを買ってきたらしい



相当恨みを買っていたらしい少女…その恨みの根幹とは一体何なのでしょうか。恐らく彼女自身に非があったのでしょうがその恨みを買う行為を行わせたものは他でもなくこの「惑星の終わり」なのでしょう。彼女が生まれながらに恨みを買っていたわけではありません。惑星が荒廃する過程で彼女の人生も同じように荒んでしまったのです。それを裏付ける描写は再び捕えられた愛する少女を目の当たりにした死刑執行人が自らの胸の葛藤を記した最後に。


小さな時は勉強も教えてくれた 優しい人



つまり彼女は確かにこの物語で民衆の恨みを買う「見せしめ」として、悪者として描かれてはいますが、すべてが彼女に押し付けられるものではないと考えました。「惑星の終わり」の先導者は彼女一人ではなかったのですから。誰に責められるものでもありません。「無敵のSoldier」における悪党達の生き様を全否定していないことを念頭に入れておけば、この「Executionerの恋」における悪として描かれた「見せしめの少女」についても一方的に責めつける民衆達こそがこの世界で本当に狂った悪の対象として描かれていることにも気づきます。彼女の犯した罪が何なのかは分かりません。しかし彼女自身が責められることを全否定することは誰にも出来ません。終わりの惑星であっても懸命に、そして理性的に生きようとした彼ら民衆こそがこの世界では「正義」なのですから。彼らの倫理は実に原始的で、秩序を既に失っています。もしかしたら、そもそも秩序など以前から存在していなかった世界なのかもしれませんが。


青年の仕事復帰できたワケ


もちろんそんなの僕に関係ない 撃つだけ



あくまで冷徹を貫こうと仕事に徹していた青年は、自らのかつて大切だったはずの優しい心を失いました。「見せしめ」と呼ばれる人々を無感情に撃ち殺すだけの仕事は、もう冷たい彼に苦痛ではなくなっていたのでしょうか。恐らく「見せしめ」というのはこの物語に描かれた少女だけではなかったのでしょう。毎日毎日狂ったこの世界で罪を犯し、そして捕まり、繰り返し罪を犯す者が現れないよう死刑を下し、民衆達に見せつけるんです。彼ら見せしめの死を持って、かろうじてこの世界は均衡を持ち得ました。彼らの死体の上に世界が成り立っているんです。しかし心を閉ざした青年は「見せしめ」の少女を見て捨てた過去を想い出します。


でも昔恋を覚えた人によく似てたんだ



「見せしめ」として吊るされた彼女のロープを断ち切り、彼女と共に深い森へと逃げ込みます。本当に咄嗟の事だったのでしょう。彼はその森で彼女と息をつきます。そしてその夜、彼女の話を聞きました。これまで彼女が犯した罪について。彼はその彼女の話に少なからず同情の姿勢を見せています。これは彼の主観でしかありませんが恋する彼女に対する補正もあったのかもしれませんが、やはり彼女の人生は同情に値する何かがあったのでしょう。それは恐らく「惑星の終わり」が招いた一人の人生の結果として犯罪者として、そして「見せしめ」としての彼女を生んでしまいました。翌日起きるとその場に彼女の姿はありませんでした。青年の金を盗み、どこかへ姿を消します。彼はこの咄嗟に起こしてしまった失態について、冒頭で語っています。「下手を打ったな」と。


やめときゃよかった こんな馬鹿なこと
下手を打ったな



物語が佳境を見せるのは次からですね。不思議なことに彼は再び仕事へと復帰しています。大罪を犯し「見せしめ」の少女を連れ出し、そして逃げ出した彼がどうして。


今日とて銃を撃つだけのお仕事
逃げないよう足かせ付けられ



その答えは次のフレーズに描かれています。まず確認したいのが「逃げないよう足枷を付けられている」のは死刑執行人である青年ですね。仕事には復帰できたのに彼には足枷が架せられているんです。これは彼の「仕事」における上司が彼自身のことをまだ信用していない証拠です。ではどうすれば彼は「仕事」の上司から彼の信頼を取り戻すことが出来るでしょうか。…そうですね。彼も「見せしめ」として罪を償えばいいんです。仕事へと復帰した彼が再び吊るされた「見せしめ」の顔を見て動揺をします。何故なら彼女は、かつて彼自身の手で逃がした少女だったから。


吊るされた奴の顔見て動揺した
かつてこの手で逃がした人だったから



彼がこの死刑執行人としての「仕事」に復帰できたのは「逃がした少女を再び捕える事が出来たから」だと思います。この壇上では確かに相当な恨みを買った少女を「見せしめ」として殺すことにも意義はありますが、執行人である彼が犯した罪を償い、少女のロープを断ち切ったその瞬間得た優しい心を、再び胸の内へと閉じ込めることへと繋げる機会を与えた上層部の思惑があったのではないかと考えるわけです。そして執行人の彼が「見せしめ」であった少女を逃がし共に逃げたことを恐らく民衆達も知っているのでしょう。ですからこの壇上では淡い恋へと走った彼も少女と同様に「見せしめ」だったんです。再び「見せしめ」を逃がす奴が現れないようにと、その小さな彼の背中を誰もが押しました。


民衆の怒声が僕の背中押す



自らを犠牲にしてでも守ろうとした彼女への恋

彼は「見せしめ」として手に持つその銃を構えます。自らの優しさを精一杯覆い隠そうと。この狂った終わりを迎える惑星で持ってはいけない心を得てしまったのですから。彼はかつて一度彼女を逃がしたことを激しく後悔していました。下手を打ったんだと、やめときゃよかったと、馬鹿なことをしたんだと。ですから再び過ちを犯さないでおこうと彼は決心し、銃を構えるんです。


やめときゃよかった こんな馬鹿なこと
下手を打ったな

今度こそ本当に撃つべきと思った でも



しかし、彼の中ではもう決意は固まっていました。苦悩する彼が葛藤の結末に浮かべた表情は…紛れもなく笑顔でした。どこまでも寂しい笑顔。彼は冷徹な彼自身を、再び自らの胸で殺しました。取り戻したその優しさを拭い去ることなど彼には出来ません。惑星が終わる瞬間であっても彼は一人の人間でした。想いやり、そして支え合う家族を夢見た人間の一人だった…それだけだったんです。「見せしめ」として大罪を犯した少女もまた、優しい人間の一人でした。温かな心を持った女性でした。幼い頃、要領の悪い少年に勉強を教えてあげられた、本当に優しい少女だったはずなのに…惑星の終わりは残酷にも彼らから「夢」を奪い、そして「幻」へと変えてしまいます。そんな青年が得た一つの「夢」を、彼は彼自身の命を持って成し遂げようとします。構えた銃口を少しだけ上へと向けて。


やっぱり撃てない 初めて好きになった人だから
小さな時は勉強も教えてくれた 優しい人



民衆は「見せしめ」であった彼らに怒声を浴びせます。少女には犯した大罪に対する怨恨を、そして青年には犯した罪に対する贖罪を求めるその声を。しかし青年はその怒声などもう耳には届いてはいませんでした。彼は人として持つべき大切な優しさを再び取り戻したのですから。彼の主観ではあっても、同情に値する彼女の悲痛な人生を聞いてしまったのですから。終わりを迎える惑星で「見せしめ」として殺されるべき彼女に…恋をしてしまったのですから。自らの破滅をも恐れず、彼は彼女の吊るすロープを撃ち、民衆の怒声をも掻き消す大声で、彼女の背中を押しました。優しさに塗れた、彼女への溢れた想いをその叫びにのせて。



民衆の怒声が僕の背中押す 結局撃ったのは
彼女吊すロープ「ひとりで逃げろ!」と僕は叫んでた



翌日、彼女が「見せしめ」として吊るされていたそのロープに青年が吊るされていました。かつて少女が犯した大罪の怨恨を彼がすべて背負いました。彼女に浴びせられていたはずの怒声は彼の背中へとぶつかります。しかし彼にはそんな怨恨はもう眼中にありませんでした。青年はつらい少女の過去を知っていたのですから。悲痛な人生を聞いてしまっていたのですから。



その夜彼女の話を聞いて眠った
同情しきってた



彼女の口から明かされたその話が真実だったのかどうかは分かりません。しかし少なくとも少女を愛したかつて死刑執行人であった青年にとっては紛れもない真実だったんです。彼女が受けた怨恨はすべて彼女のせいではない。彼女が幼い頃持っていたあの優しい心を奪ったのは、この惑星の破滅であることを青年は悟りました。そして死にゆく彼が最期に思ったことは最後まで愛する彼女の安否、それだけだったんです。死を目の前にした彼の胸には計り知れない恐怖よりも、彼女の今後を心配する愛に満ち溢れていました。



君は今何をしてるかな…



青年の変わらない想いが動かした少女の想い

しかし物語は彼の死を持って幕を閉じるわけではありませんでした。かつて「見せしめ」として吊るされていた少女は自分を助けた死刑執行人だった青年の姿を見ていました。「見せしめ」だった彼女がその体一身に受けていた怨恨が今は彼の背中へと浴びせられています。そんな彼の姿を見て疑問に思ったのでしょう。何故、私を助けたのかと。きっと今の彼女に彼の心情を理解することはできないでしょう。そのきっかけを、駆られた衝動を、招いたこの結果を説明することは、きっと行動を起こした彼自身にも答えられないことなのでしょうから。しかしそんな彼女であってもたった一つ理解し、得たものがありました。それは冷徹であったはずの彼が得たそれと同じ人間であれば誰でも持ち合わせていたはずの「優しい心」。彼の隔てない優しさに触れ、安心したその眠りの中彼女は彼の愛情を一身に感じる事が出来たのでしょう。彼女は吊るされた彼に複雑な感情を持つのと同時に、ある一つの決心が固まっていました。それは繋がれた手錠を胸に両手で持ったナイフが彼らの恋路の結末を物語っています。すべては賢人を集め世界を救おうとした無力な少年が「ぼく」に説かれた一節に。



ある人は死刑する人と助け合ったと



かつて「見せしめ」であったはずの少女は死刑執行人の青年と助け合い、今後を歩んでいくことを決意していました。この物語は彼らの恋路を綴ったものではなく、始まる恋路に至るまでの物語なんです。破滅を迎えるこの惑星で紡がれた一つには死刑執行人とその死刑対象であったはずの「見せしめ」の少女、相反する彼らの破滅をも恐れるその強靭で、それでいて大切な優しさを秘めた恋路が語られていました。自らを犠牲にしてでも愛する者を守りたい。愛する少女の幸運を最期まで願った彼は、その少女と共に歩むことを許されました。惑星が終わりを迎える、その瞬間まで。しかし恐れる事はありません。彼らの恋は、惑星の終わりを迎える時失うはずだった命をも賭すことができる恐れを知らぬ愛だったのですから。



やっぱり撃てない 初めて好きになった人だから



表題「Executionerの恋」を最後に考える

以上で「Executionerの恋」の考察は終了です。前回の考察から間を空けてしまいすいませんでした。自らの破滅をも恐れぬ恋路…これは「終わりの惑星」だからこそ描くことが出来るテーマだなと思いました。破滅を迎えるのは恐らくこの物語が紡がれ、そう遠くない未来なのだと思います。彼らが愛を育むことができるのはその破滅を迎える瞬間までなんです。しかし、彼らは恋路に至るこの物語で一度自ら互いの命を賭しました。自らを犠牲にしてでも守りたい最愛の人を、こんな荒廃した惑星であっても見つける事が出来たんです。それは彼らが失ってしまった「優しさ」と強く結び付きました。惑星が終わりを迎えるのと同様に人々の心までも荒廃してしまうこの世界で彼らはきっと異端なんだと思います。しかし異端であってもそれが人として正しい姿なのだと、麻枝さんのこれまでの物語でもずっと貫いて描かれてきています。ですから今回も決して彼らの選択が間違ったものではなかったのだと、そう信じたいと思います。表題は歌詞同様、状況説明に徹してしまってはいますが『自らの破滅をも恐れず互いの命を賭した「Executionerの恋」』としました。次回は「とある海賊王の気まぐれ」です。ご意見・ご感想はお気軽にどうぞ。


【2012/05/19 00:28】 | 終わりの惑星のLoveSong
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brycespeed
こんばんは。brycespeedです。

更新の頻度はこれだけ、情報の詰まった長文ですから当然の時間だと思いますよ。

今回はせれーでさんと自分の考え方の大枠が殆ど同じなので特にコメントすることが無かったり…しますが、どうしましょうかw
嬉しい状況ではあるのですが、書く事が…
なんだか、すいません。
そんな訳でコメントが短くなってしまいましたが、ご了承ください。

次回も楽しみに待ってます!!


P.S この文章のソースを教えて頂けませんか?

>麻枝さん自身も「Killer Song」と共通した荒廃の意味を持つ楽曲であると提言していました。




せれーで
brycespeedさんへ

コメントありがとうございます!!これからもまったりではありますが更新は最後まで貫くつもりなのでそう言って頂けて嬉しいです。

共感していただける部分が多いようで嬉しいです!!読んで下さっただけでも十分ですよ。こうやってどんなものでもコメントしただけたらもっと嬉しいです。次回も頑張ります!!

文章についてはリスアニ!Vol.9の麻枝さんのインタビュー記事で「Executionerの恋」が挙げられた文章を引用しておきます。自分はこのインタビューを読んでそう表現したつもりです。


>>「KillerSong」のような世界観と同じで、犯罪者を見せしめに殺すような、この世界観のシーンのひとつです。


brycespeed
返信ありがとうございます!

自分も持ってる雑誌でしたが、忘れてしまっていたようです。もう一回読み直さなければ…

とにかく情報ありがとうございました!!

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コメント
この記事へのコメント
こんばんは。brycespeedです。

更新の頻度はこれだけ、情報の詰まった長文ですから当然の時間だと思いますよ。

今回はせれーでさんと自分の考え方の大枠が殆ど同じなので特にコメントすることが無かったり…しますが、どうしましょうかw
嬉しい状況ではあるのですが、書く事が…
なんだか、すいません。
そんな訳でコメントが短くなってしまいましたが、ご了承ください。

次回も楽しみに待ってます!!


P.S この文章のソースを教えて頂けませんか?

>麻枝さん自身も「Killer Song」と共通した荒廃の意味を持つ楽曲であると提言していました。

2012/05/19(Sat) 19:07 | URL  | brycespeed #-[ 編集]
brycespeedさんへ

コメントありがとうございます!!これからもまったりではありますが更新は最後まで貫くつもりなのでそう言って頂けて嬉しいです。

共感していただける部分が多いようで嬉しいです!!読んで下さっただけでも十分ですよ。こうやってどんなものでもコメントしただけたらもっと嬉しいです。次回も頑張ります!!

文章についてはリスアニ!Vol.9の麻枝さんのインタビュー記事で「Executionerの恋」が挙げられた文章を引用しておきます。自分はこのインタビューを読んでそう表現したつもりです。


>>「KillerSong」のような世界観と同じで、犯罪者を見せしめに殺すような、この世界観のシーンのひとつです。
2012/05/19(Sat) 23:46 | URL  | せれーで #-[ 編集]
返信ありがとうございます!

自分も持ってる雑誌でしたが、忘れてしまっていたようです。もう一回読み直さなければ…

とにかく情報ありがとうございました!!
2012/05/20(Sun) 22:50 | URL  | brycespeed #-[ 編集]
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